現実

現実を見つめ直す。

作品紹介『目を擦る女』

ミステリー強化月間。

 

今回はSFミステリー界の小林泰三『目を擦る女』です。

 

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

玩具修理者などを初めとするホラー小説もめちゃめちゃ面白いんですが、ミステリーも面白いです。しかもただのミステリーではない、SF、ホラーが混ざった独特の作品で、ハマる人はとことんハマるかと思います。

 

 

最初に読んだのは角川のホラー大賞を受賞した玩具修理者でした。短編なので、すぐに読み終えることが出来ますが、内容はめちゃめちゃ怖い。『黒い家』貴志祐介)の人間的な怖さではなくて、SF的というかミステリー的な怖さがあるなあと当時は思っていました。実はこの作品を期にホラー小説に一時期どっぷり浸かっていたことがありまして、当時は『天使の囀り』『鼻』『夜市』など角川のホラー大賞受賞作をしらみつぶしに読んでいました。また今度紹介したいですね。特に『鼻』曽根圭介)は倒錯トリックものミステリーとしても楽しめると思います。

 

 

同作に収録されている『酔歩する男』がとてつもなく印象に残る作品で、これも単独で出せるレベルです!玩具修理者ガチもんのホラーですが、酔歩する男はもしこれが現実で起こったら・・・という感のSFホラーで、タイトルどおり読んでいくうちに頭の中が「酔って」いきます。

 

 

さて、今回の読んだのが『目を擦る女』。短編がいくつか入っているのですが、共通するテーマというのが(一部若干異なると思います)、「現実が現実であることの証明とは?」言い換えると「夢が夢でないという証明方法は?」ということですね(全然ちがうなーという方は申し訳ないです)。現実と思っていることが、現実だとどうして証明できるのか、また夢だということが現実ではない、ということがどうやって証明できるのか、といった哲学的ではありますが、確かに正論です。実際、自分が今生きて、そして感じているこの現実空間が、実はコンピューターの仮想空間であったら・・そして、これは仮想空間でないということがどうやって証明すればよいのか、逆にはこれが現実であるということをどのように証明すればよいのか・・・・ふと、このような疑問を感じたら、この小説内における、ホラー要素にどっぷりとハマることが出来ると思います。

 

 

表題作は一見タイトルを見ると、かなり現実感のあるものですが、中身はがっつりホラーです。個人的に一番好きなのが、「予め決定されている明日」ですね。上で挙げたような、世界観が一部コミカルな表現で描かれていますが、結末はとても後味の悪いものとなってます(登場人物が廃人同然になってしまう)。昔あった世にも奇妙な物語」とかにありそうな話ではありますがね。