現実

現実を見つめ直す。

日常の憂いとともに、椎名林檎の『無罪モラトリアム』を聴いてみた。

世紀末の頃は特に退廃的な雰囲気が日本にも若干あって、コンピュータの世界では、「2000年問題」とかいって、1000年代の表記が終わる2000年に、コンピュータ上のトラブルが発生するっていう風説が流れたぐらい。音楽業界でも、この世紀末感は健在で、どこか退廃的な空気があった気がする。

 

 

こういう時代の中で、女性ソロアーティストとして、稀代の表現者として世に登場したのが椎名林檎小学生のころ『本能』が凄い流行って、存在自体は勿論知っていました。が、改めると、椎名林檎ソロの曲を真剣に聴いたこと、ありませんでした。当時はビジュアル系の音楽シーンには凄く詳しかったのですが、いわゆるロキノン系のミュージシャンに少し抵抗感があったことは否めません(勿論単なる先入観でしたが)。

 

 

社会に出るような大人になると、この先入観のせいで、色々勿体無いことをしてきたなーと後悔する場面によく遭遇します。「売れているから、真剣に音楽をやっていない」、「自分で作詞作曲をしてこそ、真のアーティストだ」みたいな根拠のない先入観。その人自身の背景とか、このグループ、ソロ、曲がどういう状況で生み出されたかをあまり考えたことがなかった。こういう表面的(=物質的)でなく、もっと立体的、言い換えれば、精神的に社会を見ることができれば、人としてもう少し充実した人生を送れたのではないか?なんて、隣の芝生は青い状態になるもんですよ。

 

 

さて、今では、東京オリンピック関係の音楽もやるなど、日本を代表するミュージシャンの一人である彼女が、世間的に広く知られるようになったのは、やっぱり『本能』のPVのナース服でしょうが、アルバムとしては、『ここでキスして』が収録されている『無罪モラトリアム』(1999)でしょうか。

 

無罪モラトリアム

無罪モラトリアム

 

 

椎名林檎史上、最大のヒット作は次作の『勝訴ストリップ』でその売り上げ250万枚。それも凄いけど、今作は椎名林檎のファーストアルバムであり、原点。

 

 

ウィキには「約1年半チャートインし続けるというロングヒットを記録」とあるが、凄いな。CDが爆売れしていた時代ではあったけど、今でも年間通して売れ続ける曲ってないよね。そして、もっと凄いなって思うのが、これを作った時の年齢が20歳だったってこと。音楽は努力も必要だけど、才能も必要だってことがよく分かるね。実際には、収録されている曲を高校生ぐらいの時には、原曲作っていたみたいなので、凄いな。

 

 

アルバムをフルで聴くまで『ここでキスして』しか知らなかったけど、みんな良い曲です。昭和歌謡曲風なんだけど、それを当時の世紀末の世相を表現していて、退廃的。この退廃観が次作の『勝訴ストリップ』の『罪と罰』に昇華される。

 

 

このアルバムに特に限ったことではないけれど、椎名林檎のアルバム通じて、部分部分にレトロ、パンク、ポップ、バラードそしてロックの面があって、歌詞も人間の内面を吐き出していて、アーティストとして表現力の才能がありすぎる。普段、洋楽ロック聴いている人でも聴ける邦楽ロックの名盤。