現実

現実を見つめ直す。

作品紹介『孤独の歌声』

永遠の仔』っていうドラマが昔やっていた(実は見たことはないけれども)。

 

そのドラマの原作者のことも知っていた。

 

 

そんな天童荒太のデビュー作がこの『孤独の歌声』なんです。

これがデビュー作ってやっぱり、才能あるよな・・・。

 

孤独の歌声 (新潮文庫)

孤独の歌声 (新潮文庫)

 

 家族関係を扱った小説で有名な作家ですが、この小説も、一部家族愛を扱っています。

 

内容としては、主な登場人物3人の視点から巷を騒がせている猟奇殺人事件を軸に構成されていて、次第にそれぞれの人物の物語が収斂していく・・・という感じです。

 登場人物の心理描写や、各人物の「過去の心の傷」を繊細に描写していて、物語へ没頭できます。

 

 

タイトルが『孤独の歌声』という悲しさを感じさせるものなのですが、いずれの主要人物も、心に傷を負っており、そのことで、世界からの『孤独感』を感じています。

「世間に認められず、若さゆえに反抗してしまう青年」「幼少期のとある事件を心の傷として負っている女性警察官」、そして、「親子関係の中でどうやら「心の傷」を負ってそれが大人になっても解消できない男」(基本的に狂ってはいるが、心理的背景という点では一番考えるべき)など、本作の内容はかなりハードだと思います。

 

特に、「ある人物」の生い立ちや、殺人の描写などは、かなり衝撃的なので、ページを捲るときに少々覚悟をすることが求められるかもしれません。「グロテスクなものは一切受け付けません!」「喜劇しか小説は読まないんです!」という方は読むことを少し考えたほうがよいかも・・・。

 

 

 

 

良いなと思ったのが、やっぱりラストシーン。それぞれの人物が負った傷がどのように解決し、それを乗り越えていくのか、とても印象的なシーンで、とても感動します。何より、人物描写が素晴らしいので、改めて「小説っていいな!」という感動を覚えることが出来ると思います。

 

 

あと、この小説は大人向けですね。大人になってからこそ、こういう登場人物の心理に感じることが出来ると思います。ただの暴力描写がキツイ小説ではなく、人間の心理、成長の意味を考える小説だと思います。

作品紹介『首無しの如き祟るもの』

一言いうと、マジで半端ない。推理小説好きなら、絶対に抑えておくべき。

 

『首無しの如き祟るもの』

 

首無の如き祟るもの (講談社文庫)

首無の如き祟るもの (講談社文庫)

 

 

民俗学を研究(探求?)する探偵である刀城言耶シリーズ。

 

ミステリー小説を紹介するサイトでやたら評価が高く気になっていたので、読んでみたのですが、これって推理小説のひとつの到達点なのではないか?

 

自分はこのブログで取り上げている以外にも推理小説は読みますが、トリックと物語の構造については、トップレベルの衝撃。マジでとてつもない。

だから、逆に考えると、ミステリー初心者はこれを1冊目に選んではダメです。

 

世界観としてはズバリ横溝正史そのもの。本家、分家や祟り、民族伝承など、世界観は怪奇推理小説といった感じ。ところごころにホラー要素もあるから、そのホラー要素を「科学的、合理的」に解決していく様が面白いです。

 

この作品でいうキーワードは「入れ替わり」。

タイトルにもあるように首無し死体が多く登場します。

この首無し死体はミステリー小説にはありがちなテーマで、

「なぜ犯人は首を切る必要があったのか」

「そもそも首無し死体は誰なのか?」

といったことは推理小説における一つの大きなテーマです。以前に紹介した京極夏彦魍魎の匣にも首無し死体が登場しますし、それを巡っての解釈も繰り広げられます。

 

 

本作『首無しの~』については、作中のトリック=トリックといっても殺人に使われるトリックと物語を構成するトリック)が衝撃的すぎる。

心に残る小説って、「犯人が誰だった」、とか、「使われるトリックがこういうトリックだった」ってその小説を読んだ後でも記憶しているのですが、しっかり脳に刻まれるほど衝撃的なトリックだと思います。

 

そして、その謎を解き明かす手法が、これまた衝撃的。この本、大体600ページちょっとあるのですが、謎がめちゃめちゃあります。謎が多すぎるので、途中で箇条書きで教えてくれます笑。500ページほどの段階でも、全く何が何だかわからなかった。ただ起こっている事件、事実に翻弄されるだけなんです。私は何も手出し出来ませんでした・・・。

このように、かなりの後半までいっても解決できる謎が全くなくて残り数ページで全部解決できるのか?と感じたほど。

大半の読者はこういう感じになると思います。

 

ただ、その一連の謎も、「たった一つの事実」に気づくと、

すべてがドミノ倒しの如く解決します。その爽快感はハンパないです。作品の時代背景は昭和の戦前、戦後とかそのぐらいの時代設定ですが、完成度が高いので、読みづらいとかそういうことはありません。

 

 

この『首無しの~』以外にも完成度の高い作品がありますが、作者の三津田氏はとてつもない頭脳を持っている人だと思う。よく誉め言葉で使われる「悪魔的頭脳」っていうやつ。

作品紹介『狂骨の夢』

狂骨の夢

 

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

 

 

やっと読み終えることが出来ました。

 

相変わらず、約1,000ページの圧倒的ボリューム。読み進めるにはある程度の覚悟が必要だ。

 

難点としては、やはり、重い。厚さも相当なモノになるから、バッグの中に入れると、かなり体積をとってしまうため、持ち運びには注意を要する。

 

こんな厚さにも拘わらず、読み始めるとページはすいすいと進む。京極夏彦の作品って文章がページをまたがないようにページを捲る前で必ず文章が終わるようになっている(文庫版だけ?)から読みやすいのかな。あとは、人が読みやすいってことは、文章書くのがやっぱり上手いんだなと思う。

 

京極夏彦の中で、最も有名なのが百鬼夜行シリーズの2作目である魍魎の匣であって、結論から言うと、この『狂骨の夢』を読んだ後でもそれは揺るがなかった。

 

 

saya1988.hatenablog.com

 

 

ただ、物語の重厚さ、人物描写、ラストに至るまでの伏線回収はとてつもなく、読んでいると眩暈する覚える。読んだ後はもうフラフラ笑。

 

内容はというと、フロイト、仏教、神道キリスト教、民族伝承、神経症、記憶喪失などなど難しそうな言葉のオンパレードで、その物語を構成する要素もかなり複雑で読むのであれば、一気に読まないと内容が頭で理解できないかも。内容てんこ盛りで、頭がよくなったような錯覚すら覚える。ページ数が多いから、ある程度まで、読んで1週間放置っていう感じだと、少し厳しいかもしれないです。

 

魍魎の匣がトップとは言ったものの、自分はこの世界観好きだな・・・。物語の構造も重くて結構好み。ただ、いわゆる「名探偵」がいて、「奇抜なトリック」があって、「犯人」がいる、といった王道的な推理小説とは、少し異なるものだから、探偵モノっていう期待はしないほうが良いかもしれません。

 

でも、この物語を取り巻く構造の作り方は本当に凄い!「4度夫を殺す」(文庫版の裏にも書いてあるのでネタバレ的には大丈夫だと思いますが)っていう謎の解決についても、よくもまあ文章上で作れるな、と寒気すら感じる。